納骨の儀


スイスを旅をしている間に亡くなった母方の祖母の納骨式のため、週末に出雲を訪れた。
葬儀は旅行中に行なわれ、ぼくは参列することができなかった。
穏やかな海を見下ろす丘の上に佇むお墓に、
身内のごくわずかな人々によって、祖母の遺骨は静かに納められた。
長く離れていた故郷の海へと帰ってきた。
ひっそりと、穏やかに。
華やかでなくても良い。
自然との繋がりを絶やすことなく生きたのだと思う。
かく言う自分は、前日に食べた岩ガキに当たったのか、
朝から体調最悪で、休み休みなんとか丘の上のお墓まで辿り着いたのだった。
海に来たのに刺身も食べられず、帰りがけに立ち寄った玉造温泉では温泉に入ることもできずに、
ホテルの部屋でのたうち回っていた。
「こんなことがいつもあったらいかん」と、
親戚のおばさん(母の姉)がお守りとして勾玉をプレゼントしてくれた。
このあたりは勾玉の産地で、古くから魔除け石、幸福を呼ぶ石として身につけられてきた。
「このなかには、ばあさんの気持ちも入ってるからな」
深淵な緑色をした勾玉を傍らに置き、今日は絵を描いている。