陸前高田


学生時代の後輩の実家を訪ねるため、
岩手県陸前高田に行ってきた。
大震災で甚大な津波の被害を受けた街。
市立博物館で働いていた後輩もまた、津波の犠牲になった。
早朝、高速バスを降りて曙をむかえる頃、
長い坂道の下に、何もない平地が見えた。
がれきの山が連なる街を歩いて後輩の実家を目指す。
ぬいぐるみ、おもちゃ、冷蔵庫、カメラ。
大きな鉄筋コンクリートの建物は
内部は天井が落ち、壁が崩れ、廃墟となっていた。
3階の窓ガラスはないけれど、
4階のガラスは残っていた。
思わず涙が溢れてきた。
あれから8ヶ月以上が経つが、
側溝に溜まった土を掻き出す作業が行なわれていた。
今までずっと、何のために絵を描くのかわからなくなっていた。
しかし自分の足で歩き、
土地や、復興のために重機を操る人たちの姿を見ていて、
「お前はお前の仕事をしっかりやりなさい」と言われているような気がした。