『裏庭』


梨木香歩著『裏庭』を読み終えた。
梨木さんの本はとても好きで、
これまでにも何冊も読んで影響を受けてきた。
彼女の本を読むと、
小説であれエッセイであれ、
その知識と思想に圧倒される。
そして「書(描)きたい!」と思う。

実は、ハードカバーの『裏庭』は高校生のときに、
何気なく買っていた。
確か、夏の頃でファンタジーっぽい小説を読んでみたくなったからだった。
しかし、その本はそのまま本棚へ。
彼女の他の著書はたくさん読んだが、
『裏庭』だけは読んでいなかった。
ハードカバーだったので、
旅に持って行けなかったからかもしれない。
ちなみに『からくりからくさ』は伊豆大島の旅へ、
『春になったら苺を摘みに』はカナダのクイーンシャーロット諸島の旅へ一緒に出かけた。
(この文庫本の表紙は星野道夫さんの写真だ)
そう思って文庫版を購入し、
屋久島の旅に持って行った。

『裏庭』は梨木さんの初期の作品だったと思う。
そのためか、その後の作品よりもファンタジックな内容だったけれど、
そこに貫徹されているテーマは彼女がその後も書き続ける「死」だった。
そして「生/死」「西洋/東洋」「表庭/裏庭」「大人/子ども」・・・など、
重層的な対立構造の中で物語が語られる彼女の特徴がこの作品でも見られた。
「こちら側」と「向こう側」そしてその「境界」。
このテーマはエッセイ『ぐるりのこと』で直接触れられている。
ぼくが文章に煮詰まったときに必ずと言って良いほど手に取る本なので、
興味のある方はぜひ。